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【JPCA2023】学生によるポスター発表 その2

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2023年5月13-14日に行われた日本プライマリ・ケア連合学会の学術大会で当医学部6年の原田駿さんが発表してくれました。

【演題名】生徒から教員へ働きかける夜間高血圧スクリーニング

【背景】

日本に高血圧患者は約4300万人存在する。40代以降になると高血圧の有病者の割合が増える。通常血圧は活動時よりも睡眠時の方が低いが、40~75歳の人の15%は活動時よりも睡眠時に血圧が上昇している、という研究結果がある。その人々はriser型の夜間高血圧と呼ばれ、通常の高血圧と比較して5年以内の心血管疾患や心不全による死亡リスクが有意に高いが、健診は日中に行われるため健診では夜間のみ血圧が上がるriser型高血圧をキャッチ出来ないこと、夜間は寝ているため自覚症状がないこと、夜間高血圧という概念そのものが知られていないことという理由から多くは未診断である。以上の理由から、現状では高血圧の診断を受けていない・通院していない方の夜間高血圧を早期発見・早期介入することが困難である。私たちはそういった患者に対して予防の領域で夜間血圧測定の接点を作ることができないか、と考えた。夜間高血圧の早期発見・早期介入を目的に、中高生と大学生がチームを組んでヘルスケアの課題解決を行うinochi Gakusei Innovators’ Program(i-GIP)での活動を実施した。中高生と大学生がチームを組む、という性質を生かし、「生徒から教員へアプローチする」という私たち独自のモデルが夜間高血圧への認知や関心にどの程度影響を与えるか、ということについて考察した。

【方法】

高校生が最も身近に接し、仕事の負担が大きく最も健康リスクが高い業種である学校の先生にアプローチし、夜間血圧測定をしていただいた。具体的にはオムロン株式会社と連携し、学校に同社の手首式血圧測定器(HEM-9601T)を導入し、広尾学園中学校・高等学校の生徒が同校の先生に、血圧測定器を用いて夜間血圧を測定するという「宿題」を出した。同校の先生が夜に自宅で夜間血圧を測定し、血圧を測定したという事実をgoogle formを用いて生徒に報告した。この実証実験は2022年10月24日~28日の5日間で行われ、4名の先生の夜間血圧測定を行った。また、この実証実験を行うにあたり同校の生徒35名に対し「夜間高血圧についての知識がついたか」「先生が宿題をしたのか関心が出たか」「保護者の夜間高血圧について心配になったか」という質問のアンケートを実施した。

【結果】

先生4名全員が夜間血圧の測定を行い、夜間血圧測定率は100%に、また夜間高血圧の発見も1例あった。先生からのコメントとしては「生徒からのプレッシャーは効き目がある」「多少手首の圧迫感があったものの問題なく就寝できた」というものであった。また「夜間高血圧についての知識がついた」と答えた生徒は27人(77%)、「先生が宿題をしたのか関心が出た」と答えた生徒は22人(63%)、「保護者の夜間高血圧について心配になった」と答えた生徒は24人(68%)という結果になった。

【考察】

以上の結果より、学校内で生徒から先生に働きかけるというアプローチは夜間高血圧の認知や夜間血圧測定率上昇のみならず、生徒の健康問題への知識や関心を高めることに有効であることが示された。一方で、このモデルは教員の健康に対する生徒の関心や生徒と教員間の信頼関係がある程度ないと成り立たないと考えられる。今後このモデルを活用し夜間高血圧への早期発見を増やすために、大規模かつ多施設で検証を行いこのモデルの有効性を検証していく必要があると考えられる。

【学会発表してみた感想・学んだこと】

 対面での学会で発表することは初めての経験だったため、始まる前はとても緊張していました。チームメンバーと発表直前まで何度も練習を繰り返し、質疑応答対策もしっかりと行ってきました。発表本番に関してはその練習の甲斐あって、大きな声でスムーズに私たちの満足いく発表ができました。質疑応答も活発で、沢山の人々に私たちの活動内容や活動にかけた想いが伝わって嬉しかったです。

 今回の学会発表を通じて学んだことは、私たちがチームを結成してから活動を実施し、学会発表まで行うことができたのは非常に多くの方のご協力をいただくことができたからであり、私たちは本当に恵まれている環境にいた、ということです。学会発表をしたいという意欲溢れる中高生との出会いから始まり、研究途中のため非売品である手首型血圧計を大学生・中高生である私たちに無償で2台も貸与してくださったOMRON株式会社様、私たちの活動に協力してくださった広尾学園中学校・高等学校の先生方と生徒の皆様、私たちの活動のメンタリングをしてくださった方々、JPCAの存在を教えてくださった方々、ポスター作成のアドバイスをくださった先輩方、そして学会発表への推薦をしてくださり、更には指導まで引き受けてくださった安藤先生。誰か一人でも欠けていたら今回の学会発表の夢は叶いませんでした。全ての出会いに感謝し、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

 私たちのチームは、わたくし原田(慶應義塾大学医学部6年)と広尾学園高等学校1年3人の合計4人で活動していました。今回の学会発表も4人で行いました。私にとってだけでなく、高校生3人にとっても今回が初めての学会発表だったとのことです。三人とも口を揃えて「学会が本当に楽しかった、発表できて嬉しかった」と言ってくれて、ここまで活動を継続してきて本当によかったと思いました。今後、私たちが出会い全力をかけて取り組んだi-GIPというプログラムの中から、来年以降のJPCAやその他の学会で発表するチームが生まれてくれば幸いです。