当科の講師平橋淳一医師がクラッシュ症候群からの救命を可能とする治療ペプチドを開発したことを報告する論文を発表いたしました
お知らせ
当科平橋淳一専任講師は、東京薬科大学および共立女子大学との共同研究により、地震災害などで致死的病態をもたらすことで知られるクラッシュ症候群からの救命を可能とする治療ペプチドを開発したことを報告しました。クラッシュ症候群では骨格筋の圧迫で横紋筋融解症による急性腎障害を引き起こし、多くの生命が奪われることは世界の幾多の地震災害において知られてきました。
現在の治療選択肢は迅速な大量輸液や血液透析など専門的医療施設で施行されるものに限られ、被災現場で簡便に実行可能な治療法の開発が重要な課題とされてきました。研究グループはこれまでの炎症と免疫に関する研究成果をもとに、クラッシュ症候群から救命可能な新規治療ペプチドの創製に成功しました。
研究者らは、これまで横紋筋融解症に続発する急性腎障害発生機序に白血球細胞外トラップ現象(ETs)という自然免疫機構の制御不全があること、生体内多機能タンパクで初乳の成分として知られるラクトフェリンおよびその誘導体がETs制御機能を有することを報告してきました。ラクトフェリンをより低分子化して製剤化するために構造活性相関研究を展開し、クラッシュ症候群モデルマウスの生体内で強力な治療活性を有するペプチド誘導体M10Hse(Me)を構築しました。今後、この新規ペプチドの薬物動態や安全性が評価されることにより、ヒトのクラッシュ症候群の治療薬へと開発が進むことが期待されます。
本研究成果は、2023年6月5日英文速報誌Biochemical and Biophysical Research Communications (BBRC) online版に発表となりました。